出願の完全オンライン化が進むなかで、公立中高一貫校でも受検票や会場案内を「志願者マイページから自宅で印刷」する方式が各地で広がっています。紙の受け渡しが減って便利になる一方、家庭のプリント環境が整っていないと直前でつまずくリスクも。たとえば栃木県は令和8年度入学者選考からインターネット出願を導入し、受検票は準備完了通知後に各自印刷と明記。コンビニ印刷も利用可能としています。本稿では、この流れの背景と、受検生・保護者・塾が直前期に困らないための実務ポイントを、公式資料に基づいて整理しました。
ニュース概要 — 何が変わるのか
紙配布中心だった受検票・会場案内を、出願ポータルのマイページでダウンロード→各自印刷に置き換える自治体が増えています。学校や教育委員会の業務効率化、郵送・配布ミスの削減、志願者側の入手時期の柔軟化がねらいです。栃木県の案内では、出願情報入力→受検料納付→願書の自宅印刷・郵送→受検票“準備完了”通知メール→受検票の自宅印刷という運用を示し、プリンターがない家庭はコンビニ印刷が可能と具体的に案内されています。
何が実務の“つまずき”になるか
方式そのものはシンプルでも、印刷の失敗が当日のトラブルに直結します。余白設定や拡大縮小の誤りでQRコードや受検番号が読みにくい、モノクロ出力でコントラスト不足、用紙サイズ不一致、インク切れ、自宅にプリンタがない/Wi-Fiが不安定など、想定以上に“アナログな壁”があります。さらに、印刷できるタイミングは「準備完了通知後」のため、「メール見落とし→印刷が前日夜」というケースも珍しくありません。
背景の解説 — なぜ“自宅印刷”が広がるのか
自治体側には、紙配布の事務コスト削減と、誤配・遅配の回避という強い動機があります。志願者側も、再発行・再ダウンロードが容易で、住所変更やメール再登録への対応がしやすいメリットがある一方、各家庭のICT環境差が新たな課題に。そこで近年の案内では、スマホ操作だけで完結できる設計(PC非必須)や、コンビニ印刷の明記など、デジタルとアナログの“橋渡し”が整えられています。
直前期チェックリスト — 受検生・保護者向け
実務で効くのは「印刷テストの前倒し」と「代替手段の確保」。出願サイトのサンプルPDFや、学校が出している体裁見本で一度プリントし、A4/片面/等倍(100%)/自動拡大縮小オフなどを確認。姓の表記(漢字・カナ)や生年月日、受検番号の視認性も確認しましょう。プリンタが不調な場合に備え、最寄りのコンビニ店舗・マルチコピー機の操作手順を家族で共有しておくと安心です。

塾・予備校関係者への注目点
受検票の自宅印刷は、設定ミスや通知見落としが“直前トラブル”の典型です。塾・予備校が「印刷サポート日」「チェックシート」「通知リマインド」を運用に組み込めば、家庭の不安を解消し、当日の安心を支えることができます。
- 「印刷サポート日」の設定
出願ピーク(通知が届く週)に、教室プリンタを開放して一括印刷サポート。等倍/A4/余白ゼロの固定プリセットを用意し、スタッフが視認性チェックまで同時対応。 - “受検票チェックシート”の配布
項目は、受検番号の一致、氏名カナ、写真の有無(学校によっては受検票に写真貼付が不要・不可の場合もあるため注記)、QR・バーコードのコントラスト、印刷枚数の予備。保護者サイン欄を入れると実効性が上がります。 - 「メール見落とし防止」オペレーション
志願者・保護者に通知想定日の前日リマインドを配信。出願サイトのドメインを受信許可に設定するテンプレートを配布し、迷惑メール自動振り分けの外し方も画像付きで解説。
まとめ
受検票の電子交付(マイページ印刷)は、出願の“当たり前”へ。便利な一方で、印刷設定や通知メールの見落としがボトルネックになりやすいのも事実です。栃木県のように受検票は準備完了通知後に各自印刷、プリンターがない場合はコンビニ活用まで公式に示す流れは、今後さらに広がるでしょう。家庭は等倍・A4・余白設定の事前テストと代替印刷ルートの確保、塾は印刷サポート日/チェックシート/受信設定テンプレで支援を。デジタル化の利便を、当日の安心につなげる準備が合格力を下支えします。
参考・出典
- 栃木県教育委員会「令和8年度県立中学校入学者選考からインターネット出願を導入します(案内PDF)」
https://www.pref.tochigi.lg.jp/m04/r7kenritsutyu/documents/20250402110235.pdf - 栃木県教育委員会「令和8年度 県立中学校入学者選考(トップページ)」
https://www.pref.tochigi.lg.jp/m04/r7kenritsutyu/index.html


