この数年で、人気の公立中高一貫校の学校説明会は“並べば入れる”時代から、事前申込が前の運用へと移りました。会場定員や安全確保の観点から、オンライン予約フォームの導入が進み、申込多数の場合は抽選、さらに説明会と個別相談を分けた二段申込といった設計も珍しくありません。直近では都立南多摩が「すべて事前申込制」を明示し、都立の合同説明会でも抽選案内の実例が示されています。本稿では、最新の公式案内に基づいて動向を整理しつつ、「予約解禁日を落とさない」ための家庭・塾の実務ポイントを短くまとめます。まずは事実関係を押さえ、その上で備えを設計しましょう。
ニュース概要 ― いま何が起きているのか
この春以降も、東京都内の人気校を中心に説明会の事前申込制が標準化しています。学校側は会場キャパや安全配慮のため、予約上限・入替制・同伴者数制限を設け、需要が上限を超える回は抽選。併せて、説明会(全体)と個別相談(少人数)を分ける“二段制”で混雑を分散する例が続いています。
・都立南多摩は最新のお知らせで「学校公開・学校説明会はすべて事前申込制」と明記。
・都立中等を含む「都立学校合同説明会」には抽選実施の回があると各校から周知。
・都立両国では出願手続等説明会のWeb事前申込開始日を公式PDFで告知するなど、日付・開始時刻の明確化が一般化。
申込制が広がる背景 ― 定員管理と公平性
運用がここまで進んだ理由はシンプルです。会場定員と安全配慮を守りながら、より多くの家庭に公平に機会を提供するため。コロナ禍を契機に整備が進んだ予約・抽選システムは、感染症流行が落ち着いた後も「混雑抑制」「待機列の排除」「保護者の移動コスト最小化」といった効果をもたらし、恒常運用として定着しました。人気校では会場外の人流や近隣配慮も重要で、時間帯分散・入替制は地域との共生策としても機能します。
運用パターン別・当日の見え方
同じ「申込制」でも、実務は学校・イベントごとにかなり違います。代表的な3パターンを押さえておくと、“行けるはずが行けなかった”を減らせます。
1)先着・時間帯入替制
申込枠を複数の時間帯に分割。定員に達した枠は即締切。
→ 行きたい枠にこだわるほど難度が上がる。代替枠の許容が鍵。
2)抽選制(単回一括)
期間内に申込→抽選→当落通知。本人確認手続やQR入場が併用されることも。
→ フェアだが、抽選結果後に代替案を用意できるかが勝負。
3)二段申込(説明会+個別相談)
まず全体説明会に申込、別枠で個別相談を再度予約。回によっては相談のみ抽選。
→ 申込が二度になるため、締切と開始時刻の把握が最重要。
実務チェックリスト ― 家庭が今やること
説明会は“情報収集”の場であると同時に、学校との相性確認でもあります。申込制のもとで機会損失を避けるため、次の3点を最優先に。
・予約解禁カレンダーを作る(学校横断/家庭の共有カレンダー)。
・代替日程を事前に決める(抽選落選・満席時の第二・第三候補)。
・移動動線と滞在時間の見積(同日ハシゴは余裕を持つ)。
さらに、都立合同説明会→個別校説明会→個別相談の順に接触度が高まる設計が一般的です。合同説明会で“広く”、個別校説明会で**“深く”、個別相談で“個に落とす”**。この流れを前提に、聞きたいことを3項目までに絞ると回収率が上がります。
解説 ― 人気校で“抽選・二段制”が起きやすい理由
とくに都心・多摩の人気校は、志願関心層>会場定員という構図が慢性的です。学校側は来場者の安全確保と近隣配慮を最優先に、イベントの“消費体験”を設計します。具体的には、
・繁忙期(夏・秋)に枠を細かく分割し、密度を下げる。
・個別相談は教員工数と教室数がボトルネックのため、枠を厳密管理。
・出願直前期は最新要項の説明に特化し、質疑の“横展開”はFAQ化。
結果として、抽選や二段申込が最も合理的になる局面が多いのです。これは人気の裏返しでもあり、保護者・受検生にとっては「当たれば濃い体験、外れても資料・動画・FAQで最低限の情報は担保」という設計に近づいています。
塾・予備校関係者への注目点(3提案)

説明会の申込環境が複雑化する中で、塾・予備校が“情報ナビゲーター”として動く価値は年々高まっています。
家庭単位では拾い切れない予約解禁日や抽選情報を、塾が可視化・共有・行動化まで設計することで、機会損失を大きく減らせます。ここでは、現場で即実践できる3つの提案を紹介します。
1)予約解禁カレンダー+即時リマインド
塾ポータルで学校横断の予約開始日・時刻を可視化。前日・1時間前の二段リマインドを自動配信。抽選型は申込締切をアラート対象に。
2)「説明会で聞くべき3問」テンプレ(学校別)
カリキュラム・適性検査の評価観・生活指導(ICTや部活)に絞ったA4一枚の質問テンプレを配布。家庭の“聞き負け”を防ぎ、面談で回収・共有。
3)“併願×説明会”同期表
志望群(第一~第三)と説明会→個別相談→出願のスケジュールを一枚に統合。抽選落選時の代替校・代替回が自動で見える設計に。
【重要】塾内マニュアルは毎年版で更新。去年の案内の“流用”は事故の元。
まとめ
人気校の学校説明会は、申込制・抽選・二段申込が当たり前になりました。背景には、定員管理・安全確保・公平性の確保があり、デジタル予約の普及で恒常運用へ移行しています。家庭は、予約解禁カレンダー+代替日程の事前設計が最優先。学校ごとの“段数”と持参物、同伴条件を事前に必ず確認しましょう。塾は、予約解禁の可視化と即時リマインド、そして質問テンプレの配布で体験の質を底上げできます。抽選に左右されても、情報取得の“底”を確保できるよう、合同説明会→個別校→個別相談の三層設計で無理なく回収。準備の巧拙が、そのまま秋の安心感に直結します。
参考・出典(公式・一次情報)
・東京都立南多摩中等教育学校「学校公開・学校説明会はすべて事前申込制(最新のお知らせ)」
https://www.metro.ed.jp/minamitama-s/news/2025/05/7.html メトロ教育
・東京都立南多摩中等教育学校「学校案内・学校説明会ページ」
https://www.metro.ed.jp/minamitama-s/guide/ 東京都教育委員会
・東京都立学校(府中高校サイト内)「都立学校合同説明会の実施(抽選の可能性等に関する案内)」
https://www.metro.ed.jp/fuchu-h/news/2024/08/2024.html メトロ教育
・東京都立両国高等学校附属中学校「第1回授業公開のお知らせ(運用例の周知)」
https://www.metro.ed.jp/ryogoku-h/news/2025/05/2_6_9_28_1.html メトロ教育
・東京都立両国高等学校附属中学校「出願手続等説明会のご案内(Web申込開始日時の明示)」
https://www.metro.ed.jp/ryogoku-h/assets/%EF%BC%96%E4%BB%A4%E5%92%8C%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%87%BA%E9%A1%98%E6%89%8B%E7%B6%9A%E7%AD%89%E8%AA%AC%E6%98%8E%E4%BC%9A%E3%81%AE%E3%81%94%E6%A1%88%E5%86%85_1.pdf メトロ教育
・東京都立南多摩中等教育学校「令和4年度 公開イベントのご案内(申込制の明記:歴年運用の参考)」
https://www.metro.ed.jp/minamitama-s/img_sub/%E4%BB%A4%E5%92%8C4%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E5%85%AC%E9%96%8B%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88%E3%81%AE%E3%81%94%E6%A1%88%E5%86%85.pdf メトロ教育
※本稿は上記の公式ページ・公式PDFの掲載内容を確認し、「申込制の定着」「抽選の実施例」「開始日時の明示」という一般的傾向を整理したものです。各回の募集条件・締切・同伴可否・持ち物は必ず最新の学校公式サイト・主催者ページでご確認ください。


