はじめに
広島県立広島叡智学園中学校(HiGA)は、広島県が誇る全寮制の中高一貫校です。中学から高校にかけての一貫した学習プログラムとして、国際バカロレア(IB)プログラムが採用されていることが大きな特徴となっています。これは、海外の大学進学も目指すことができる資格として注目されており、全生徒が、この資格の認定を受けることを目指した教育が実施されています。本記事では、広島叡智学園中学校の概要や特徴、そして入学者選抜の傾向とその対策について詳しく解説し、受検を検討している方にとって役に立つ情報をお届けします。ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
広島叡智学園中学校の概要
広島叡智学園中学校(HiGA: Hiroshima Global Academy)は、広島県が設立した全寮制の中高一貫教育校で、2019年に開校しました。広島叡智学園中学校は、「地域や社会のよりよい未来を創造できるリーダーの育成」を目指し、学習を支えるIBを用いた探究的な学びと、生活を支える異学年・異文化の寮生活を通じて、生徒を育てる環境が整っています。中学校から入学した生徒がそのまま進学できる「併設型中高一貫教育校」として、進学先となる高等学校も中学校同様に全寮制で、異学年や多国籍の生徒が共同生活を通じて成長する仕組みが特徴です。
広島叡智学園中学校の大きな特色の一つは、国際バカロレア(IB)教育プログラムの認定校であることです。中学段階から「MYP(Middle Years Programme)」、高等学校で「DP(Diploma Programme)」と呼ばれるプログラムを導入し、幅広い学びの基盤と探究的な思考を養います。中学から高校1年生の12月にかけては、MYPを通じて基礎的な学問の理解と分析力を深め、さらに高校1年の1月からDPに進むことで、専門的な知識の応用や問題解決力を身に着けていきます。この一貫した学習の流れによって、広島叡智学園中学校が目指すリーダーシップや課題解決能力を身に着け、地域や社会を「よりよい未来」につなげることができるリーダーの育成を目指しています。
広島叡智学園中学校の特色
広島叡智学園中学校の教育は、生徒一人一人の主体的な学びを重視し、探究的なアプローチと実社会での経験を大切にしています。この章では、同校の特徴的な教育スタイルと環境について詳しく説明します。
生徒と教師が共同で創り上げる授業
広島叡智学園では、生徒と教師が共同で創り上げる授業を行っており、内容には、生徒一人ひとりの想いが反映されています。これは、生徒が自主性を持ち、責任感やリーダーシップを育むだけでなく、自ら企画立案した内容が失敗した際に、「なぜ失敗したのか」という面から学ぶ力へと繋げることを目的としています。そのために、学校の方針で「失敗は自分自身が決めるもの」と考え、生徒が失敗を恐れず、新しいことに取り組めるような環境づくりを推進しています。
国際バカロレア(IB)プログラムの導入
広島叡智学園は、国際バカロレア(IB)の認定校であり、中学校から高等学校にかけて一貫したIBプログラムが採用されています。中学段階の「MYP(Middle Years Programme)」は、8つの教科(言語と文学,言語の習得,個人と社会,理科,数学,芸術,保健体育,デザイン)を学習するプログラムです。MYPはこれらの8教科を基にした各教科間の関連性や実社会との結びつきを理解させる内容で構成されており、生徒が総合的な思考力を養うことができるよう設計されています。また、進学先となる広島叡智学園高等学校では、更に内容を進めた「DP(Diploma Programme)」が提供されており、これにより生徒はより幅広い学問領域で探究的な学びを体験することができます。
「ディプロマ」資格の全員取得を目指す教育
広島叡智学園では、全校生徒が国際バカロレア(IB)の2つの一貫した教育プログラム(MYPとDP)を履修する仕組みを採用しています。中等教育プログラム(MYP)では、学問と社会の関連性を重視し、8教科を通じて幅広い知識を学びます。そして、高校1年の1月から始まるディプロマプログラム(DP)では、6つの教科と「コア」と呼ばれる課題を履修し、生徒の多文化的視点や批判的思考力を養います。また、広島叡智学園では、DPを履修した生徒全員が国際的な大学入学資格である「国際バカロレア資格」の取得を目指した教育が行われていることが特徴です。これら2つの一貫した教育プログラムによる生徒のグローバルな成長を後押ししています。
広島ならではの地域学習
広島叡智学園では、「未来創造科」と呼ばれる地域のコミュニティーや人々との触れ合いを通じた学外の活動が設定されています。世界遺産や平和教育を中心としたこのカリキュラムは、地域社会の一員としての意識を高めるために組み込まれているものです。未来創造科では、「WELL-BEING(幸せ)」「ENVIRONMENT(環境)」「PEACE(平和)」という3つのテーマが探究されています。ここでの学びを通じて、生徒は広島の歴史や文化を理解し、平和や共生の価値について深く考える機会が与えられています。
広島叡智学園中学校は、個人の成長と国際的な視野の双方を重視し、現代の社会において必要とされる多様な能力を育むための教育環境が整っています。
広島叡智学園中学校の入学者選抜の形態と出題傾向
広島叡智学園中学校の入学者選抜では、第一次選抜と第二次選抜の二段階を通じて、学力だけでなく多角的な能力が評価されます。ここでは、それぞれの選抜形式と出題傾向について詳しく解説します。
1. 第一次選抜
第一次選抜では、適性検査Aと適性検査Bの2つの検査が行われ、受検者の基礎的な学力と、論理的かつ多角的に物事を考える力が評価されます。各検査の内容は以下の通りです。
- 適性検査A
適性検査Aは、主に資料から情報を読み取り、条件に従って筋道を立てて推論する力が求められます。受検者は、複数の資料を分析し、その内容を理解した上で、条件に基づいて答えを導き出す必要があります。問題は、図表やデータなどの資料が提示され、それに沿った論理的な思考力が試されます。 - 適性検査B
適性検査Bでは、与えられた資料を多面的に解釈し、受検者の経験や知識と結びつけて発想する力が試されます。複数の資料を比較・分類し、それらを関連付けて考察する問題が多く、幅広い知識と柔軟な考え方が求められます。過去には、ある社会的なテーマに関する異なる視点のデータを基に、受検者が独自の見解を導き出す問題が出題されたこともありました。これにより、受検者の創造力や発想力が評価されます。
第一次選抜では、適性検査の成績に加え、面接や出願書類も総合的に評価され、合格者が決定されます。この段階での合格により、第二次選抜へ進む資格が得られます。
2. 第二次選抜
第二次選抜では、広島県立広島叡智学園中学校ならではの特色として、受検者が2泊3日の共同生活に参加し、グループワークを通じて協働力や課題解決力が評価されます。具体的な内容は以下の通りです。
- グループワーク
第二次選抜では、受検者が小グループに分かれ、他者と協力しながら課題に取り組むことで、協働力やリーダーシップ、柔軟性が試されます。このグループワークでは、受検者が意見交換を行いながら共同作業を進め、共通の目標に向けて問題解決を図るプロセスが重視されます。 - 面接および振り返り
共同生活を終えた後には、面接とともに生活の振り返りが行われ、受検者が自らの行動や協働の姿勢について自己評価を行います。この過程により、受検者の自己理解や自己改善能力も見られると考えられ、自己成長の姿勢が評価基準の一つとなっています。
このように、第二次選抜は学力だけでなく、他者と協力して物事に取り組む力や、自己を振り返り成長しようとする意識が重視される点が特徴です。
出題傾向
広島叡智学園中学校の適性検査では、読解力、資料分析力、論述力、そして創造的思考が重視されます。文章読解では長文を読み解き、筆者の意図を把握する力が問われ、資料分析ではグラフや表から情報を抽出し、自分の意見を形成する力が求められます。さらに論述問題では、日常の事象について具体例を挙げつつ論理的に記述する力が必要です。創造的思考も評価対象となり、自由に発想し自分の考えを述べる機会が設けられています。
広島叡智学園中学校の入学者選抜の特徴
広島叡智学園中学校の入学者選抜では、単なる学力ではなく、資料読解力や論理的思考力、表現力、協働力といった多様な能力が求められます。以下に、それぞれの特徴について詳しく解説します。
資料の読解力と論理的思考が必要
広島叡智学園中学校の適性検査では、受検生が資料を読み取り、論理的に整理して考察する力が求められます。特に、図表や文章などの多様な情報が提供され、それらを総合的に理解して必要な情報を抽出することが重要です。このため、適性検査では複数の資料を適切に分析し、関連付けながら回答を導く力が評価されます。
表現力と説明力が求められる
適性検査Bでは、与えられたテーマに基づいて自分の意見を論理的に記述することが求められます。この形式では、受検生が自分の考えを他者に伝えるための表現力が重視されます。具体的には、10~15行前後で自分の意見を説明する能力が問われ、文章の構成や論理的な流れが評価されることが想定されます。受検生は、単に自分の考えを述べるだけでなく、それを論理的に組み立てて説得力を持たせることが重要です。
協働と課題解決力が必要
広島叡智学園中学校の第二次選抜では、2泊3日の共同生活を通じて、他者と協力しながら課題に取り組む力が評価されます。ここでは、単なる学力だけでなく、コミュニケーション力や他者との協力を重視した課題解決力が求められます。協働の中で、受検生は自分の役割を認識し、グループの目標達成に向けて積極的に貢献する姿勢が大切です。このような活動を通じて、柔軟な思考やリーダーシップ、コミュニケーション力や他者と協働して課題を解決する能力が試されます。普段から友人や家族と意見を共有し、課題解決のために協力する経験が、この選抜対策に有効です。
広島叡智学園中学校の入学者選抜対策
広島叡智学園中学校の入学者選抜対策では、読解力や論理的思考、さらに協働力や発想力が重要とされています。適性検査には、長文読解や資料分析、論述が含まれ、多角的な視点や柔軟な発想が求められます。また、第二次選抜でのグループワークでは、他者と協力しながら課題に取り組む力が重視され、日常生活での訓練が効果的です。以下で具体的な内容を解説します。
読解力と分析力を鍛える
広島叡智学園中学校の適性検査対策には、複数の資料や長文を正確に読み取る力が重要とされています。ここ数年の傾向は理科分野の問題が多く、科学記事などの長文を読むことなどが効果的です。また、グラフや表を使った問題にも対応できるよう、統計データの分析や比較の訓練を積むことが求められます。具体的には、新聞の経済面や科学面などを参考にし、異なる情報を読み解き、要点を抜き出して理解を深めると良いでしょう。
論述力を強化する
適性検査では、自分の意見を他者に分かりやすく説明する論述力が求められる傾向があります。10~15行前後で自分の意見をまとめる練習を重ね、論理的で説得力のある表現を身につけることが重要です。特に、社会的な事象や日常生活での出来事を題材にし、自分の立場や意見を理由と共に述べることで、幅広いテーマに対応できる力が培われます。日々の練習として、ニュースや学校での出来事について自分の意見を日記やノートに書き留め、後で見直すことも効果的です。
創造的な発想力を養う
広島叡智学園中学校の適性検査では、発想力や創造力が試される問題も見受けられます。これに備えるため、さまざまな視点で物事を考える柔軟な発想を持つことが大切です。例えば、環境問題や社会問題について自分なりの解決策を考えたり、実際に目にする日常の問題に対して新しい視点からの意見を持つ練習が有効です。これにより、課題に対して自由な発想を広げる力が養われます。また、ディベートやディスカッションの場を利用して多様な意見を聞き、自分の考えをさらに深めていくのも良い方法です。
協働力を高める
第二次選抜では、2泊3日の共同生活を通じて、他者と協力して課題に取り組む協働力が重要視されています。普段からグループで活動する機会を増やし、ディスカッションやプロジェクトに参加することで、協調性や柔軟な対応力を身につけることが効果的です。特に、異なる年齢層や背景を持つ人々と交流するボランティア活動などに参加することで、幅広い視点や柔軟性を培うことができます。第二次選抜のような環境で家族や友人以外の人間と意見を共有し、何かを共同で達成する経験を積むことも可能です。他者の意見に耳を傾ける姿勢や、自分の役割を認識して協力しながら課題を解決する力は、第二次選抜で重要なポイントとなるでしょう。
まとめ
広島叡智学園中学校は、グローバルな視点と地域に根ざした学びを兼ね備えたリーダーの育成を目指す、全寮制の中高一貫校です。広島叡智学園中学校Aでは、生徒主導の学びや国際バカロレア(IB)プログラムを採用し、主体性や課題解決能力を養うことを目的としています。また、入学者選抜では、基礎的な学力だけでなく、表現力や協働力といった多面的な力が評価されます。受検対策として、日頃からの読解力や論述力の向上、柔軟な発想力、そして協働力の訓練が重要です。広島叡智学園への進学は、学びを通じて多様な視野を広げたいと考える方にとって、成長の大きな一歩となるでしょう。