はじめに
愛知県の県立中高一貫校は、2025年度の第一次導入に続き、2026年度も新たな附属中学校が開校しました。その中でも、西三河の西尾高等学校附属中学校と、東三河の時習館高等学校附属中学校は、どちらも探究学習を重視しながら、学校ごとの方向性がかなりはっきりしています。西尾は地域と世界をつなぐ「グローカル」、時習館は理数教育と国際理解を土台にした「文理融合探究」がキーワードです。今年の開校・入学者選抜の内容を整理しておくことは、来年以降の志望校選びや説明会参加にも役立ちます。本稿では、公式情報をもとに、両校の違いを短くわかりやすく整理します。
ニュース概要――同じ“探究型”でも、学校の色は違う
愛知県の県立中高一貫教育では、学校ごとの既存の強みを生かした教育内容が重視されています。西尾・時習館はいずれも2026年4月開校の第二次導入校であり、探究学習を柱にした学校として位置づけられています。ただし、同じ「探究」といっても、見ている方向は同じではありません。西尾は地域を入口に世界を学ぶ色合いが強く、時習館はSSHや国際教育の蓄積を生かして、文系・理系を横断する探究へ向かう構図です。
西尾高附属中――「地域から世界へ、世界から地域へ」のグローカル探究

西尾高等学校附属中学校の大きな特徴は、「地域」を学びの出発点にすることです。県の資料では、西尾について、地域を土台として世界を学び、「地域から世界へ」「世界から地域へ」という双方向の視点からグローカルな探究学習に取り組むとされています。グローカルとは、グローバルとローカルを組み合わせた言葉で、地球規模の視野を持ちながら地域の課題を考えるという意味合いです。
西尾市は、歴史・産業・観光・農水産物など、地域資源が比較的見えやすいエリアです。こうした素材は、探究学習との相性がよく、たとえば「地元産業を世界にどう伝えるか」「地域課題を国際的な視点で見直すと何が見えるか」といった問いにつながりやすいと考えられます。単なる英語重視ではなく、地域理解と国際的視野を往復する学びとして見ると、西尾の特色がつかみやすくなります。
時習館高附属中――SSH・AGHを土台にした文理融合探究
時習館高等学校附属中学校の特色は、理数教育と国際理解教育をベースにした文理融合です。県の資料では、時習館について、SSHとAGHの活動をベースに、教科横断的で文理融合の探究的な学びに取り組むと整理されています。SSHはスーパーサイエンスハイスクール、AGHはあいちグローバルハイスクールを指し、時習館高校がこれまで蓄積してきた理数・国際系の教育資源が附属中にもつながっていく形です。
また、時習館高校のSSHページでは、リベラルアーツと文理融合による総合知の創出、さらに「異分野」「異年齢」「異文化」による学びが掲げられています。これは、理系だけに閉じた学びではなく、社会課題を多面的に見て、データ・科学・言語・文化を組み合わせて考える方向性といえます。将来的に、理数系に関心がある生徒だけでなく、国際問題や社会課題に関心のある生徒にも向く可能性があります。
志願状況から見る注目度――西尾2.00倍、時習館約5.03倍
2026年度入学者選抜では、西尾高等学校附属中学校グローカル探究コースは募集人員70人に対して志願者140人、時習館高等学校附属中学校普通コースは募集人員70人に対して志願者352人でした。単純計算では、西尾は2.00倍、時習館は約5.03倍です。倍率だけを見ると時習館の注目度が高く見えますが、倍率は学校の優劣を示す数字ではありません。
西尾は、特色が「グローカル探究」と明確なぶん、志望理由との相性が大切になります。一方、時習館は伝統校としての認知度や東三河における学校ブランド、SSH等の教育実績が志願に影響した可能性があります。いずれにしても、受検生側は倍率よりも、自分がその学校で何を探究したいのかを整理することが重要です。
受検生・保護者への解説――“なんとなく有名校”では選びにくい時代へ
公立中高一貫校の選択では、通学距離や倍率、学校名の知名度が気になりがちです。しかし、愛知県の県立中高一貫校は、学校ごとのコンセプトがかなり明確に打ち出されています。そのため、今後は「どこが入りやすいか」だけではなく、どの学校の探究テーマに子どもが合うかを考える視点がより重要になります。
西尾なら、地域を深掘りしながら世界につなげる学びに興味があるか。時習館なら、理数・国際・社会課題を横断して考える学びに魅力を感じるか。説明会や学校ブログを見る際も、行事名や授業風景だけでなく、その活動がどんな力を育てようとしているのかを意識すると、志望理由が作りやすくなります。
塾・予備校関係者への注目点
1)学校別の「探究テーマ適性」を見える化する
西尾と時習館は、同じ愛知県立の中高一貫校でも、訴求ポイントが異なります。塾側は、単に偏差値・倍率で並べるのではなく、地域課題型に向く生徒、理数・国際横断型に向く生徒というように、志望校選びの観点を整理すると面談の質が上がります。
2)志望理由書・面接対策は“学校の言葉”に寄せすぎない
公式資料のキーワードをそのまま暗記するだけでは、面接で本人らしさが出にくくなります。たとえば西尾なら「自分の地域で気になること」、時習館なら「科学や社会課題を組み合わせて考えたいこと」など、本人の体験と言葉に置き換える練習が重要です。
3)倍率説明は冷静に、学校理解は丁寧に
西尾2.00倍、時習館約5.03倍という差は注目されやすいですが、倍率だけで誘導するとミスマッチが起きます。塾としては、倍率は入口情報、学校理解は進路設計として分けて説明することが求められます。
まとめ
西尾高等学校附属中学校と時習館高等学校附属中学校は、どちらも2026年度に開校した愛知県立の中高一貫校ですが、特色ははっきり分かれます。西尾は地域と世界を往復するグローカル探究、時習館はSSH・AGHの蓄積を生かした文理融合探究が柱です。2026年度の志願状況では、西尾が2.00倍、時習館が約5.03倍となりましたが、倍率だけで学校を判断するのは早計です。来年以降の受検を考える家庭は、説明会や学校発信を通じて、「この学校で何を探究したいか」を親子で言語化しておくことが大切です。公立中高一貫校選びは、いよいよ“名前で選ぶ”段階から、学びの中身で選ぶ段階へ進んでいます。
参考・出典
愛知県教育委員会「県立中高一貫附属中学校のWebページ」――二次導入校として西尾高附属中・時習館高附属中などが2026年4月開校であることを確認。
愛知県教育委員会「令和8年度愛知県立附属中学校入学者選抜の志願者数について」――西尾・時習館の募集人員、志願者数、検査内容、日程を確認。
愛知県教育委員会「中高一貫教育の導入(第二次導入校)に向けた検討事項」――西尾のグローカル探究、時習館のSSH・AGHをベースにした文理融合探究、国際バカロレア導入を目指す方針を確認。
時習館高等学校附属中学校 公式サイト――令和8年4月6日の開校、学校生活・IB関連の発信を確認。
愛知県立時習館高等学校「SSH」――文理融合、リベラルアーツ、異分野・異年齢・異文化による探究の方向性を確認。


