はじめに
大阪府立咲くやこの花中学校は、ユニークな教育方針と専門的な学びの場を提供する、魅力的な公立中高一貫校です。2008年に大阪市の中高一貫校として開校して以来、ものづくり(理工)、スポーツ、言語、芸術(美術・デザイン)の四つの専門分野を基にした教育を実施し、生徒たちの興味や才能を発展させる機会や場を提供してきました。2022年には、管轄が大阪府に移管されたことで、大阪府全域からの出願が可能になっています。本記事では、咲くやこの花中学校の概要や特色、入学者選抜の特徴と対策について詳しく解説します。受検を考えている方に向け、実際の選抜形態や分野別の対策法も取り上げているので、是非最後まで読んで参考にしてください。
咲くやこの花中学校の概要
咲くやこの花中学校は、2008年に大阪市の併設型中高一貫校として開校し、2022年に大阪府へ管轄が移管しました。管轄の変更に伴い、一学年あたり80名の生徒を大阪府全域から募集しています。また、管轄の変更後も咲くやこの花中学校では「ものづくり(理工)」「スポーツ」「言語」「芸術(美術・デザイン)」の四つの専門分野に焦点を当てた教育が行われていることも変わりはありません。生徒たちは中高6年間を通じて、興味を持つ分野での専門的な学習を深めながら、自分の才能や創造力を育む環境で切磋琢磨しています。卒業後の進路である咲くやこの花高等学校では、専門性を深化させるため「理数」「理数」「ロボット工学」「スポーツ科学」「言語社会」「造形芸術」「映像表現」の6つに分かれたカリキュラムが提供されています。このようにして、生徒一人ひとりが自らの目標に向けた学びを追求できる環境となっています。
咲くやこの花中学校の特色
咲くやこの花中学校は、他の中学校と異なり、独自の教育活動を行う点で特徴的です。それぞれの活動は生徒たちの個性や才能を引き出し、成長をサポートする役割を果たしています。以下で具体的な内容を解説します。
分野別学習
咲くやこの花中学校の大きな特色の一つは、週2時間行われる「分野別学習」です。これは、4つの専門分野に分かれて中高の教員が連携して行う授業で、生徒たちは「ものづくり(理工)」「スポーツ」「言語」「芸術(美術・デザイン)」の中から自分の興味のある分野を選び、学習を深めます。検査段階で専門分野が決まってしまうので、出願前に自分の興味関心を踏まえて選択をしましょう。例えばものづくりでは、生物分野の観察や実験・プログラミング実習など、スポーツ分野では、陸上競技を専攻する生徒が体操競技に挑戦するなどの取り組みなどが行われます。また、言語分野ではECC国際外語専門学校訪問などの校外学習、芸術分野では文化発表会に向けての取り組みなどが行われています。
ものづくり(理工)分野
科学技術や工学に興味がある生徒向けに、次のような活動が行われます
- 生物分野の観察や実験を通じて科学的思考を養う。
- プログラミング実習でITスキルを身につける。
- ものづくりを通じて論理的な発想や問題解決力を伸ばす。
スポーツ分野
運動や競技に関心がある生徒向けに、多様な体験が提供されます
- 陸上競技を専攻する生徒が体操競技に挑戦するなど、新しい種目に挑む。
- 基礎体力向上を目的としたトレーニングを実施。
- チームプレーや挑戦心を育む活動が行われる。
言語分野
語学力や異文化理解を深めたい生徒向けに、以下の学習が行われます
- ECC国際外語専門学校への訪問で異文化交流を体験。
- 英語を中心としたコミュニケーション能力を強化。
- 外国語や異文化に関する知識を実践的に学ぶ。
芸術(美術・デザイン)分野
美術やデザインに興味のある生徒向けに、次のような取り組みが行われます
- 文化発表会に向けた作品制作に集中。
- 美術やデザインの基本技術を実践的に学ぶ。
- 創造力や自己表現力を高める活動を展開。
この授業は中高の枠を越えた発展的な内容が扱われ、高等学校の施設も利用しながら行われるため、専門性を持った学びが可能です。進学先となる大阪府立咲くやこの花高等学校でも、この分野別学習で得た知識やスキルをさらに発展させる機会が提供されています。例えばスポーツ科学系列ではスポーツ科学実習室を活用して身体の動作を科学的に分析することにより、運動能力や競技力の向上方法を学ぶことができます。
充実した部活動
部活動もまた、生徒たちの学びをより実践的に充実させる要素です。すべての生徒が必ず、各分野ごとに指定されたいずれかの部活動に参加し、学んだ知識を活かして実際の活動に取り組みます。たとえば、「ものづくり(理工)」分野の生徒は科学部や数学研究部に所属し、実際に実験や研究を通じて学習内容を深めます。また、指定された部活以外に特定の条件を満たせば希望に応じて第2部活動にも参加でき、さらに幅広い経験を積むことが可能です。こうした部活動は、生徒の興味や才能を活かしながら成長する場となっています。ただし、スポーツ分野の生徒は部活動の掛け持ちができないため、注意が必要です。
少人数指導
一般的に実施されている総合的な学習の時間を用いた体験を通した学びや探究学習以外に、さくやこの花中学校では週2時間、各分野ごとの専門を鑑みた学習を推進しています。また、分野ごとに関わりのある先への研修旅行や、大学や企業訪問などを行うなどして各専門分野の先進的な学びやキャリア形成の機会の充実につなげています。
咲くやこの花中学校の入学者選抜の形態と出題傾向
咲くやこの花中学校の入学者選抜は、適性検査と作文によって行われます。適性検査は「適性検査Ⅰ」と「適性検査Ⅱ」の二つに分かれ、受検する分野によって出題内容が異なります。ここでは、それぞれの検査の概要と出題傾向を見ていきます。
適性検査Ⅰの傾向
適性検査Ⅰは、国語と算数が混ざった45分間の検査です。大問2題構成で、国語分野では与えられた文章を読み、6問の設問に解答する形式が取られています。ここでは、漢字の書き取りや品詞に関する知識問題に加え、筆者の主張を正確に読み取る読解力が求められます。そのため、幅広いテーマの文章を日頃から読み、言葉の知識や読解力を高めることが重要です。
一方、算数分野では、さまざまな資料から内容を読み取る読解力や、思考力が問われます。場合の数や図形に関する問題が出題される傾向があり、基礎的な算数の知識を確実に身につけたうえで、過去問や類似問題を解くことで形式や傾向をつかんでおくと良いでしょう。
適性検査Ⅱの傾向
適性検査Ⅱは、受検する分野により内容が異なります。主に「ものづくり(理工)」「スポーツ」「言語」「芸術(美術・デザイン)」の各分野ごとに異なる検査が行われます。
- ものづくり(理工)分野
大問が3~4題ほどの構成で、算数・理科の分野から出題されます。具体的には、分数や割合に関する計算問題や、場合の数、図形に関する問題が中心となり、理科では物理や生物に関する基礎的な知識が問われます。計算力だけでなく、考え方や過程も重要視され、部分点が与えられることもあります。 - スポーツ分野
スポーツ分野では、文部科学省が提供する『新体力テスト』の実施要項に基づき、50m走、30m走、立ち幅跳びなどの運動能力を測るテストが行われます。男女別に評価され、各種目ごとに10段階の得点が付けられます。検査に向けては、実際の基準を参考に自分の体力を把握し、日頃から体力を養っておくことが大切です。 - 言語分野
言語分野の適性検査は、大問2題の作文問題で構成されています。過去の検査では自分で絵本の文章を考えたり、グラフから読み取った内容を文章にするなどの問題が出題されました。その他に、卒業文集の表紙のデザイン候補の選定なども出題があり、幅広く対応する必要があります。適切な表現力を身につけるため、日頃から様々なテーマで作文を書く練習が必要です。また、過去には、なぜその内容を選んだか、などについての説明を求められるケースも存在するため、きちんと説明ができる文章が書けるような対策が重要です。 - 芸術(美術・デザイン)分野
芸術分野では、色鉛筆を用いての描画検査が行われます。過去には、「食材の新鮮さを表現するトラックのデザイン」の他、啓蒙用のポスターのデザインなど、幅広いテーマから出題されています。独創性や色彩の使い方、構成力が求められるため、さまざまなテーマで練習を重ねることが重要です。
作文の傾向
作文は、志望者の志望動機やをみるために300字程度でまとめる必要があります。ただ、過去には「教育活動のどのような点に魅力を感じているか?」などアドミッションポリシーについて問うが問題が出題されたケースも存在します。単に、「学校で挑戦したい」「入学の希望」などといった基本的な内容だけでなく、学校の理念や教育体制、環境などについてもしっかりとリサーチすることが重要です。これらの内容を300字程度でまとめる必要があります。
咲くやこの花中学校の入学者選抜の特徴
咲くやこの花中学校の入学者選抜は、一般的な学力検査とは異なり、適性検査を中心に行われます。適性検査は、問題文を理解し、筆者の主張を正確に読み取る読解力や、資料を読み解く思考力が問われます。また、受検する分野によって内容が異なるため、自分が選んだ分野に応じた対策が必要となります。ここでは、各分野ごとの選抜の特徴について解説します。
読解力と文章構成力が求められる
適性検査の国語分野では、与えられた文章を読んで、筆者の意図や主張を的確に読み取ることが求められます。具体的には、漢字の書き取りや品詞に関する基礎的な知識問題に加え、文章読解問題が出題されるため、幅広いテーマの文章に触れておくことが重要です。加えて、文章の要点を簡潔にまとめる力や、筆者の意図を的確に捉え、それを自分の言葉で表現する能力が問われることが想定されます。
資料解釈と思考力が問われる
適性検査の算数分野では、文章や図、表などの資料を読み取り、その内容を基に条件に沿った解答を導き出す力が問われます。場合の数や図形問題などが多く出題され、基礎的な計算力や論理的な思考力が重要視されます。過去問や類似問題に取り組むことで、出題傾向や問題形式に慣れておくことが有効です。また、算数の問題では一度解答にたどり着くだけでなく、途中の過程や考え方も評価されるため、解き方のプロセスを意識することが大切です。
受検する分野により内容が異なる
適性検査Ⅱは受検する分野により内容が異なる点も特徴として挙げられます。下記で具体的な特徴を解説します。
専門的な知識が必要となる「ものづくり(理工)分野」
ものづくり(理工)分野を選択した受検生には、算数と理科の知識が融合した問題が出題されます。分数や割合の計算、物理現象に関する問題などが中心となり、論理的な思考力と計算力が必要です。
表現力が求められる「言語分野」
言語分野では、作文問題が中心となり、自分の考えや意見を論理的にまとめて表現する力が問われます。詩や文章を読み、それについての感想を400字程度で記述する形式の問題が出題されるため、日頃から作文の練習を重ねることが大切です。また、読んだ文章に対して自分の意見をしっかりと持ち、それを説得力のある形で表現する力が求められます。過去には自分で絵本の文章を考える問題が出題されたケースもあるので、自分で物語を作成することにも慣れておくと良いでしょう。作文を書く際には、正しい言葉遣いや構成力にも注意を払い、論理的に展開することが重要です。
独創性と技術が評価される「芸術(美術・デザイン)分野」
芸術(美術・デザイン)分野では、色鉛筆を使っての描画問題が出題されます。課題のテーマに対してどのような発想を持ち、どのように表現するかが評価されます。
基礎体力と運動能力が問われる「スポーツ分野」
スポーツ分野では、体力テストに基づいた実技が主な評価対象となります。50m走、30m走、立ち幅跳びなどの運動能力を測る種目が実施され、各種目における得点が合否に影響します。
咲くやこの花中学校の入学者選抜対策
咲くやこの花中学校の入学者選抜に向けた対策は、各分野ごとに求められるスキルに応じた準備が必要です。ここでは、国語、算数、理工、言語、芸術、スポーツの各分野に焦点を当てた効果的な対策方法について詳しく解説します。
適性検査I(国語分野)の対策
国語分野では、読解力と表現力が重要です。特に筆者の意図や主張を正確に読み取ることが求められます。これを達成するためには、さまざまなテーマの文章を幅広く読み、内容を整理する練習が有効です。また、漢字の書き取りや品詞など、基礎的な知識も必要です。過去問を活用し、出題傾向を把握しつつ、文章の要点をまとめる訓練を繰り返すことで、問題に対応する力を養うことができます。
適性検査I(算数分野)の対策
算数分野では、資料を読み解き、論理的に考える力が求められます。場合の数や図形、分数や割合など、基礎的な算数知識をしっかりと身につけることが大切です。日常的な練習に加え、過去問や類似問題に取り組み、出題形式に慣れておくことで、当日の問題にも落ち着いて対応できるようになります。また、考え方の過程も評価されるため、解答に至るまでの手順を丁寧に整理することが大切です。
ものづくり(理工)分野の対策
ものづくり(理工)分野を選択する場合は、数学や理科の知識が融合した問題が出題されます。分数や割合、場合の数などの計算問題に加え、物理現象に関する理解も求められます。このため、基本的な計算力を養い、論理的な思考を鍛えることが大切です。また、過去の問題や関連する類題を解くことで、出題形式に慣れ、落ち着いて解答する準備を整えることが重要です。
言語分野の対策
言語分野では、作文問題が中心となります。過去の検査では自分で絵本の文章を考えたり、グラフから読み取った内容を文章にするなどの問題が出題されました。この分野の対策には、日頃からさまざまなテーマで文章を書く練習が効果的です。また、書いた作文を先生や指導者に添削してもらい、表現力や文章構成を向上させることも大切です。
芸術(美術・デザイン)分野の対策
芸術(美術・デザイン)分野では、指定されたテーマに基づいた描画問題が出題されます。たとえば、「公園で友人と雨宿りしている様子」や「食材の新鮮さをイメージさせるトラックのデザイン」といった具体的な場面を色鉛筆で描くことが求められます。日頃からさまざまなテーマで描画の練習を重ね、独創的な表現力や構成力を養うことが重要です。また、画材の特性を生かした効果的な色彩表現を学び、発想力を豊かにするための工夫を重ねることが求められます。
スポーツ分野の対策
スポーツ分野では、体力テストに基づいた基礎運動能力が評価されます。50m走や30m走、立ち幅跳びといった種目での得点が重要です。日頃から体力を維持し、これらの種目に備える練習を積み重ねることが大切です。公式の得点基準に基づき、自分のパフォーマンスを確認しながらトレーニングを進めると良いでしょう。
まとめ
咲くやこの花中学校は、個々の才能を伸ばすための専門的な教育が魅力です。受検者には、自分の興味や得意分野に応じた分野別の適性検査が実施されます。各分野ごとに適切な対策を行い、入念な準備をすることが合格の鍵です 。また、咲くやこの花中学校を卒業後には、咲くやこの花高等学校でさらに専門性を深める学びの機会が提供され、未来に向けた確かなステップを築くことができるでしょう。咲くやこの花中学校の受検を検討している方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。